太陽の牙 ダグラム

太陽の牙ダグラム


この作品は、地球連邦評議会議長の息子クリン・カシムが、植民星デロイヤで独立派のクーデターに巻き込まれた父親を助けに行こうとするところから始まります。
しかし、このクーデターは父親であるドナン・カシムの画策したものでした。クリンは、父親の救出作戦に参加することはできたのですが、クーデターが予想外の結末

  ・首謀者フォン・シュタインを そそのかしたとされる連邦評議会の議員の逮捕
  ・デロイヤを地球8番目の州に格上げし、州政府代表にはクーデター首謀者のフォン・シュタイン大佐が就任

となった事(一番の理由は、息子である自分が救出に出向いた事を喜んでもらえなかった事か?)に わだかまりを持ち、しばらくデロイヤに留まります。その間 独立を唱えてクーデターを起こしたフォン・シュタインは、州政府代表として独立派のゲリラの弾圧を実行していきます。
デロイヤの人々の貧困やゲリラ狩りを目の当たりにしたクリンは ある日、州政府のゲリラ狩りを妨害した為 兵士に殺されそうになりますが、デロイヤ独立の活動家であるサマリン博士に助けられ、そこでゲリラが独立のために開発中のコンバットアーマー「ダグラム」を見ることになります。ダグラムを見たクリンは、ドナン・カシムにデロイヤの独立を認めるよう説得に行きますが、ドナンは説得に応じないばかりかクリンの行動を監視してゲリラを強襲、ダグラムを奪ってしまいます。

サマリン博士が囚われ、ダグラムが奪われてしまったのは 父親にダグラムの存在を漏らした自分の責任と感じたクリンは、軍の基地に運び込まれたダグラムを仲間の協力で奪い返し、そのままゲリラと行動を共にします。
ゲリラとして行動するクリンたちは、その後

  ・指導者サマリン博士の救出
  ・地球連邦の非主流派の管理するアンディ鉱山へのたてこもり
  ・パルミナ大陸へ渡り、独立政府の樹立
  ・地球勢力一掃のための北極ポート攻略

と着実に独立活動を進めていくのですが、北極ポートの攻略中に地球側との和平交渉が開かれ、停戦状態になります。この間クリンの父親は患っていた病で危篤に陥りますが、停戦をアピールする地球側の思惑からクリンは死の直前の父親に面会することができます。
病床の父親は、クリンの行動を非難することはせず 逆に「己の信ずる道を進め」と言い残して亡くなります。

北極ポートでの和平交渉によりデロイヤの独立は成るのですが、その独立は地球側の権益をほぼそのまま認めた内容で理想と異なるものでした。クリンたちは和平の過程での内部抗争を知り、ダグラムを奪って軟禁されたサマリン博士を助け出し デロイヤの真の独立を果たそうとしますが、デロイヤ軍と地球の軍隊に追われ 武器弾薬も底をついてしまいます。そんな中、サマリン博士はクリンたちを助けようと独立政府に掛け合い 攻撃中止の約束を取り付けますが、その過程で傷を負い それが元で死亡してしまいます。死の直前、サマリン博士は
  ・自分たち大人は昔からの(地球の)やり方で独立を勝ち取ろうとしたが、このような結果を生んでしまった。
  ・君たち若者は、クリン(地球人)と仲間たち(デロイヤ人)のように新しい地球との関係を築いて欲しい
と、言い残します。
地球の軍隊は、弁務官の暗殺により兵を引き上げ、デロイヤ軍は サマリン博士の説得でクリンたちへの攻撃を停止し 武装解除を条件にクリンたちを自由にしてくれます。
しかし、クリンは独立運動に関わった間ずっと一緒に行動してきたダグラムをこのまま手渡すことはできず、砂漠の中でダグラムを破壊して自らの行動にけじめをつけるます。
デロイヤでの独立活動に終止符を撃ったクリンは、父親が亡くなった後 地球で一人で暮らす母親の元に戻ります。半年後には またデロイヤに戻ってくると言い残して。

以上のようなストーリーを持つ この作品ですが、政治的な駆け引きだけでなく

  ・地球人であるクリンとデロイヤ人である仲間の心の葛藤
  ・単なる独立では将来に禍根を残すとの配慮から 独立運動のシンボルであるダグラムに
   あえて地球人であるクリンをパイロットとして推薦するサマリン博士の深い思慮
  ・親の威光を笠にきて物事を推し進めようとする二人の兄と
   (それが正しいか判らないが)自分の考えで行動するクリン

といった骨組に沿うように張られた幾筋もの糸が物語に奥行きの深さを与えています。
今見直すと絵的には雑な面も目立ちますが、中学生という多感な時期に見たせいもあるのでしょう、高橋監督の作品の中で一番好きな作品が、このダグラムです。